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たなびく「雲の路」とオプ・アート(5/31)

最終更新: 6月27日

 うす曇り。空気が湿気を帯びて、梅雨の季節が近づいてきました。

 午前10時頃に府中市美術館に到着し、午前中にやり残していた部品のはんだ付けを行いました。前回の公開制作日から昨日までに、5つの木枠の裏側にLEDを全て取り付け終わって、点灯チェック済みです。


 今日は、最初に、木枠の内側にマイコンを取り付けます。

 マイコンの直流電源のVIN端子とGND端子、信号出力端子用のピンを取り付けていきます。マイコンのピンに接続するコンタクトピンにワイヤーを圧着し、熱収縮チューブの絶縁カバーを付けます。

 静かな制作室で、ピンセットとルーペを使いながら、とても細かい作業・・。


 呼吸する際のかすかな動きも、結果に影響してしまいます。

 LEDとマイコンをピンで接続できるようにしたら、一旦マイコンを取り外して、今度はノートパソコンとマイコンを接続してマイコンにプログラムを書き込みます。

 ノートパソコンにインストールしたArduino IDEというソフトウエアを使って、コンパイルされたプログラムをUSBシリアル接続したマイコンに書き込みます。今日書き込むプログラムは、去年作った「雲の路(みち)」用のプログラム。エラー表示なく無事に書き込みできたら、木枠の内側にマイコンを取り付けて電源を接続し、スイッチオン!

 直後に、全てのLEDが点灯します。

 最初に赤色が一斉に点灯し、次に、赤から別の色へとバラバラな色へ。


 色の変化は連続的で、とてもゆっくりしています。時間が経つにつれて、LEDごとの色の差ははっきりしてきます。そして、近い色の光が集まって、雲のようなぼんやりとした塊となり、塊がじわーっと動いていきます。


 裏面に取り付けたLEDの色の変化。赤から連続的に別の色に変化します。

 こうした確認を繰り返して、1つの木枠に対して100個程度、これまで全部で5つの木枠に、LEDとLED同士を結ぶ部品をはんだ付けしました。ひとつの部品あたり6カ所のはんだ付けが必要なので、全部合わせると3000カ所以上。一部分、失敗してやり直した箇所もあり、時間が相当かかってしまいました。コロナウィルスの感染防止のため、人にお手伝い頂くことはできず、黙々と作業。一日が終わると肩がカチコチになり、帰宅したら近くの多摩川の土手をパタパタと走って柔軟体操したりしながら工夫して進めました。

 スリット窓シリーズの「雲の路」を点灯して壁に立てかけて、しばらくそのままにして様子を見てみました。

 色光の変化。時間の経過にともなって左上から右下の写真の状態に・・。

 スリット窓を斜め上から撮影。


 実は、「雲の路」は、去年、港区にあるギャラリーの東京パブリッシングハウスで開かれた個展で発表した作品です。

 この作品用のプログラムを使って点灯確認をしましたが、今回の公開制作では、正面の壁に5点のスリット窓を並べたインスタレーションを制作する計画です。私にとって、5つのスリット窓の光でインスタレーションを構成することは初めてで、ワクワクしています!

 さて、次は、壁に取り付ける木枠の位置確認を行います。

 スリット窓シリーズの木枠には、後ろから嵌め込んで配線を隠す背板がありますが、この背板を抜いた状態で、床から木枠の中心まで145cmになるようにして、入口から向かって右側の壁にひとつ取り付けてみました。正面、左側又は右側から見たとき、右から左へ、左から右へと歩きながら見たときなど、スリット窓がどのように見えるか確認していきます。

 スリット木枠ひとつを壁に取り付けて、正面からの写真。

 壁につけた木枠を右側から見た写真。スリットの影が背面に落ちて、奥行きある段差がわかります。白色の明るい部分、影の暗い色、それより少し明るい背面の色でモノトーンの縞3本が見えます。

 スリット窓を見ながら左右に動くと、スリットと段差による影の幅が変化する様子が見られます。その様子を見ながら、スリットの内側に、視覚的変化を効果的に生み出すために、折った色紙や、絵具で彩色した木片・金属などで凹凸を作ることで、LED無しのオプ・アートの表現もイメージしていきます。想像するだけでは十分ではないので、これは別の日に実験することにしました。電気を使えない場所で作品がどのように見えるかは重要なことです。電気のスイッチを入れた状態と切った状態の両方で、見え方が変化して作品として面白くなる可能性を考えていきます。

 続いて正面の壁にも、床から同じ高さで5つの木枠を取り付けました。9本のスリットが入った木枠と、11本のスリットが入った木枠を交互に並べます。

 正面壁へのスリット窓の取り付け。

 5つの木枠を取り付けたところで、この日の作業終了時刻になりました。全体の配線は、磁性流体の作品に取り掛かる4回目の公開制作日(6月20日)より前に、美術館に来て行うことにしました。

 今日は最後に、この公開制作が始まる少し前の去年12月、青木野枝展を訪れた時に同時開催されていた常設展で、山田正亮の縦縞のストライプの絵画を見たことを書きます


その絵は1974年に作られた「Work D.170」という油絵で、194×130㎝の大きさがあり、桃色とあずき色を混ぜたような色の縦長の長方形が15本、キャンパスの上下の端の線と左右の端の線、隣り合う長方形の間の距離がすべて同じになるようにストライプに並んでいます。

縦長の長方形のすき間の色は、モスグリーンの明度を上げたような色です。今作っているスリット木枠を正面から見たときの平面の幾何学的な構成が似ていて、最初に見たとき、どきっとしました。私は山田正亮の作品は、横縞のストライプの作品や「Work F」---画面を複数の方形や水平・垂直の細い線で区切り、薄塗りで縦横斜めのタッチがわかるように色を重ねていく絵---を見たことがありましたが、縦に長いストライプを描いた絵については全く知らず、それが府中市美術館の所蔵品であると知ってとても不思議な気持ちがしました。

 学芸員の方に個展のカタログを頂いて、作家の絵のことが次第にわかってきました。山田正亮は、絵画の解体、再構築という流れで作品を変遷させますが、一貫して「絵画」の枠組みで多数の作品を残した著名な画家です。その仕事は、私からはとても離れているように見えますし、作品の行きつく先は全く違うのですが、ある部分に共感できるこだわりというか、視点を感じます。私にとって、ニューメディアの作品の反射光、透過光、発光の問題がとても重要です。山田亮の絵は、LEDのような発光はありませんが、反射光による色彩が、薄く塗られた絵の具の重なり合いの中で、薄い膜のレイヤーを透過させて出てきた色として複雑さを増し、強い魅力を感じます。塗りのタッチは、絵の具が、もともとは「液体」であることを改めて思い起します。

 そして、山田正亮の絵から、セザンヌやほかの様々な画家の絵を思い出すことができますが、私は、自律的に絵を描くコンピュータプログラム「アーロン」で知られたハロルド・コーエンの作品を思い出しました。コーエンは、「アーロン」を始める前にイギリスで抽象画家でした。二人は全然別の場所で仕事をしていて、一人はコンピュータ・アートの世界を開拓する方向に向かったため接点もありません。しかし、絵を描くというプロセスを解体して再構築していったその問題意識には、重なるところがあるように思うのです。


[1]『endless 山田正亮の絵画』東京国立近代美術館、展覧会カタログ、208頁および327頁、2016年12月6日-2017年2月12日

[2]『山田正亮の絵画 <静物>から<Work>・・・そして<Color>へ』府中市美術館、展覧会カタログ、2005年6月18日-9月14日

(このブログは5月31日の公開制作日のメモを元に書き、6月5日にUPしました。)


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