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ライトアート「スリット窓シリーズ」作り始めました(4/25)

最終更新: 6月8日


 晴れ、空気がひんやり冷たい朝です。

 新型コロナウィルスの感染拡大を食い止めるため、休館中の府中市美術館。人がほとんどいないがらんとした館内での制作となりました。対面での制作公開は残念ながらできないので、しばらくの間、Webを通じて行います。公開制作そのものが私にとって初めての体験ですが、予期せず、美術館で直接見ていただくのではなく、インターネットを介して行うことになりました。


 私が住む調布から府中市美術館までは、甲州街道を通って車で25分ほど。

 初日は朝10時に到着し、材料、機材、公開制作中に展示予定だった小作品2点を美術館の公開制作室に運び入れました。

    搬入時の制作室。廊下側が全面ガラスなので、内部の様子がよく見えます。


 今回の公開制作では、「脈動-溶けるリズム」のタイトルで、最近取り組んでいる光が変化するライトアート(このプロジェクトにまだ名前をつけていません! ここでは「スリット窓シリーズ」と呼ぶことにしました)と、もう一つ、2000年から発表してきた磁力に反応して形を変える“磁性流体”のアートプロジェクト(こちらは「突き出す、流れる」プロジェクトと呼んでいます)のインスタレーションを制作します。

 どちらも動きを伴う作品で、時間の経過とともに作品の姿が、ある瞬間はダイナミックに、あるときはゆっくりと変化していきます。磁性流体の棘(とげ)やイメージが出現する瞬間、形を失って溶ける瞬間が交互に訪れます。


 動く作品を作る動機は、変化する対象、自然、生命と、それに応対しながら変化する感覚・意識や心の動きへの関心です。精神にとって視覚からの影響がとても大きく、その体験は記憶をともなって常に動いていますし、動かない作品を前にしても、人は自らの動きの中で見ているものです。そのような関心があって、作品に誘われるように感覚と精神が遊び、喜ぶようなアートに強く惹かれるようになっていきました。

 

 ライトアートのスリット窓シリーズでは、木製のフレームに細い長方形スリットが開いています。この開口部の奥に、光が充満してその色彩を変化させていきます。光が木枠の背面の板に向かって照射され、人は光源を直接見ないようになっています。


         スリット窓シリーズ「雲の路(みち)」2019年


 発光体を見るのか、それとも反射する光を見るのか、という違いは、私はとても重要だと思っています。そして光を使う作品、ダン・フレイヴィンの光と空間の余韻が静かに広がるミニマルなライトアート、田中敦子の垂れ下がりながら繋がって発光する「電気服」のような作品を前者とすれば、光が物質の表面で反射されて見える作品の微妙な表情にも強く惹かれます。


 スリット窓シリーズは、若かった頃に水戸芸術館で見たジェームズ・ターレルの作品に影響を受けて、間接照明の光の原理を利用しています。当時見た田中隆博の大量の使用済みの蛍光灯、しかも電気を通さず発光しない蛍光光をソリッドに固めて置いたインスタレーションも、反射光の意味を考える上で、極北にある強烈な作品として記憶しています。


 スリット窓シリーズでは、細長い縦の格子に多少の立体構造を組み込むと、オプティカルな効果、アガムの作品や、山口勝弘の「ヴィトリーヌ」のような光学的な効果が出ます。目は左右に水平方向に並んでいるため、左右に視線を動かした時に、ちらちらと変化する幻惑効果が生まれるのです。スリットを水平方向にすると、水平線、地平線に平行なボーダーラインとなり、縦と比べると開放的な印象を受けるようです。


                ライトアート用の木枠


 色と明るさを動かすため、スリット窓シリーズにはフルカラーLEDを使います。

 メディアアートに使われる電子部品は、三上晴子の80年代の作品、ピーター・ボーゲルのインタラクティヴなサウンドアートのように、作品の重要なコンセプトを伝える要素として目に見えるかたちで表に出して使う場合もあれば、まったく見せない作品もありました。スリット窓シリーズでは、光に意識を集中するために、LEDやそのほかの電子部品を見えない位置に、注意深く取り付けていきます。


 公開制作室で部品を取り付ける作業を行うため、作業台を用意して頂きました。


   作業台。ここで部品を接続するケーブルを切断したり、はんだ付けを行います。


 作業台の真上にはWebカメラ1台を取り付けて、部屋の隅の小さいテーブルには、映像を記録したり配信したりするためのノートパソコンを2台置いてみました。カメラを天井に取り付ける作業をしましたが、私はちょっとだけ高所恐怖症ぎみ・・。下を見ないように、おそるおそる慎重に取り付けました。


 今後の公開制作では、スリット窓シリーズのライトアートの作品本体、磁性流体を用いるインスタレーションの実物体の部分を、それぞれ5月末、6月初旬から7月上旬までに作る予定です。その後約1か月かけて、作品の変化を作り出すソフトウエア部分の作業を行います。


 ※このブログは、公開制作日の翌日にUPし、会期の後半(7月と8月)には、公開制作日にYouTubeのチャンネル等を利用した制作のライブ中継を行う予定です。これまで2回ほど中継を試したのですが、インスタレーションの制作を伝えるのは、全体像、作業を行う手元、作品と制作者の様子など多角的な視点が欲しくなるため、とても難しいです。YouTubeは児玉幸子スタジオの2つのチャンネルを利用します。

 

 コロナ禍ができるだけ速く収束しますように。そして通常通りの対面での制作公開ができることを祈っています。


 児玉幸子(Sachiko Kodama)



#SachikoKodama #FuchuArtMuseum #児玉幸子 #府中市美術館 #公開制作

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©2020 by 府中市美術館公開制作・児玉幸子 Sachiko Kodama Open Studio @ Fuchu Art Museum

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